ビアズリーと日本 展(滋賀県立近代美術館)
今、滋賀県立近代美術館で「ビアズリーと日本」展が開催されています。
オーブリー・ビアズリーは19世紀末期にイギリスで生まれ、わずか約6年間活躍したのち、26歳で夭折した画家。
オスカーワイルドの「サロメ」の挿絵が最も有名でしょうか。
(サロメの戯曲自体も少し後に日本で大ヒットし、多くの女優が演じたり、その衣装のノースリーブのロングワンピースがサロメスタイルとして流行したりしました)
ビアズリーは、線とモノクロームの色彩だけで耽美的な美しい絵を見事に描き、ヨーロッパのみならず遥か遠く日本のクリエーター達にも多大な影響を与えました。
今回の展示品の中には、大正期の日本で絶大な人気を博した挿絵画家、竹久夢二のスクラップブックに貼られたビアズリーの作品も。
夢二もビアズリーを参考にしていたのですね。
竹久夢二 Yumeji TAKEHISA 「雪の風」(『婦人グラフ』12月号より)
1924年 木版 16.0x20.9cm
他に、日本でビアズリーに影響を受けた代表的な画家は、大正から昭和にかけて挿絵や広告デザインで活躍した山名文夫。
資生堂の花椿のデザインの作者としても有名で、
アールデコ調の線画で耽美的かつ優美なイラストを数多く生み出しています。
他には高畠華宵や岩田専太郎など、ビアズリーに影響を受けた、当時を代表する錚々たる挿絵画家の作品も展示されていました。
皆、妖艶で退廃的な世界観を醸し出していながらも、どこか透明感をたたえた不思議な美しさがあり、ビアズリーとの共通点を感じます。
それぞれの作品を比較して観てみるのもとても楽しいです。
ハイアートではないイラスト(挿絵)が日本で社会的に認められ始めた時代。
彼らは何故こぞって、あえてビアズリーに傾倒したのでしょうか・・・
ビアズリーは浮世絵など日本美術に関心を寄せていたそうで、今回の展示では北斎などの作品を翻案して描いた作品もいくつか展示されていました。
日本美術に影響を受けたビアズリーの作品が、今度は日本のグラフィックデザイナーに影響を与えていった・・・とても興味深いです。
印象派は日本でとても人気が高いですが、季節の移り変わりや自然の細やかな変化を描き出すところが日本人の感性に合っている。
というほかに、印象派の画家たちも元々、浮世絵などの日本美術を参考にしていたので、どこか不思議に懐かしいような親しみを感じてしまうことがあります。
ビアズリーにも同じことが言えるかもしれませんね。
ビアズリー展は3月27日まで。
あまり観る機会のない展示だと思います。
ビアズリーの優美な世界観に浸りつつ、日本のグラフィックデザインの祖ともいえる彼の作品と100年以上前の日本との不思議な縁に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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